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2023年7月

この夏は暑い。木がいっぱいある場所はちょっと涼しい

7月、ものすごくいろんなことがあったはずなんだけど、月末に受けた手術の印象が強すぎてそれまでのあらゆる出来事の記憶が薄れている。

小指の靭帯が切れているのを縫合し、間接の動きを邪魔しているものを除去するみたいな感じの手術。なぜそんな手術を受けることになったかというと、家の中ではしゃいでいて突き指をした上に同じ箇所を打撲し、その後ちゃんと処理せず放置していたら指が伸び切らなくなってしまったのだ。楽器を演奏する上で不便が生じていたので近くの整形外科にいったところ、大学病院で専門の先生(「手の外科」という分野があるのだね)に診てもらうしかないと言われ、紹介状を持って受診したら手術ですねということになり、演奏の本番がない時期を待って先週、ついに手術の日が来た。

手術室はその空気における青みが強くて、金属っぽい冷たさもあるのに、肉っぽいぬるさや不透明な感じの柔らかさもある。非現実的な空間、でもこれを職場とする方々にとってはこれこそが現実なのだろうか。診察室では驚くほど寡黙だった先生が手術室ではすごくハキハキしていて人間って面白いなと思う。点滴をすると幼い頃のことを思い出す、もう針を刺せる場所がなくなるぐらい頻繁に点滴してもらっていたことを。あの頃は痛いことも、幸せなことも今より多かったかもしれない。そもそも幸せは痛みとそんなに違わない。

バイタルサインのモニターを眺める角度で寝かされる。脇に注射をするタイプの部分麻酔で、その注射が済んだら「痛いところはぜんぶ終わりましたからね」と言ってくださったので安心する。麻酔がだんだん効いてきて腕全体が重だるくなっていく。意識が鮮明なまま手術室で2時間は精神的にきついのかなと思っていたけれど、自分の脈拍を示す単調なリズムと、BGMとしてかけてくださったオルゴールミュージックが重なるのを聴いているうちにここはリラクゼーションサロンかもしれないと思い始める。強制的にデジタル・デトックスできてるし、麻酔が効いているほうの腕は、感覚がなくなったついでに肩こりもなくなった気がするし。こんなにもセロトニンが出てそうな時間、ここ最近なかったなあ……と、なかばうとうとしているうちに手術が終わった。正直に言うと、もうちょっと寝ていたかった。

そんな手術のあと、患部である小指を固定しているのだが、ただそれだけで同じ側の手首や腕や肩や首が変な感じに凝ったり、片側だけ目が霞んだり歯が浮く感じがしたりして間接的にしんどい。身体に不具合がある人の気持ちがちょっとだけわかったというか、不具合そのものだけじゃなくてそこから波及する問題もしんどいんだってこと、その仕組みを初めてわかって、これまでの自分の不理解に呆れる。見えること以外をもっと想像できるようになりたい、人に優しくなりたいな、と思う。

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京都在住。創造的なことすべてに興味があります。

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