コーヒー豆の品種をまとめてみた

コーヒー豆の品種を勉強しようと思い立った。
そして、せっかく勉強するので、あとで見返せるように一覧にまとめてみることにした。
コーヒーの品種について知りたいなあという方がいらっしゃったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。

品種を学ぶ前に:コーヒーの商品名について

「キリマンジャロ」や「モカ」はコーヒーの品種名ではない

コーヒーの商品名といえば「キリマンジャロ」とか「モカ」とかが思いつくけれど、これらは品種名ではない。

「キリマンジャロ」はタンザニアにそびえる山の名前。
「モカ」はイエメンの都市の名前。

このように、コーヒーの商品名となるのは品種ではなく、地域や山の名前、つまり産地であることが多い。

つまり、ワインで言う「ボルドー」「ブルゴーニュ」と同じ仕組みだ。

どうして品種名を商品名にしないのか?

なぜコーヒーは産地を商品名にして売り出されるのか。

その答えのひとつは、おそらく「品種より産地のほうが品質の高さを保証してくれるから」だと思われる。

コーヒーにおいては多くの場合「魚沼産コシヒカリ」の「コシヒカリ」の部分よりも「魚沼」の部分のほうが重要なのだ。

では、いよいよコーヒーの品種について見ていこう。

コーヒー豆はアラビカ種とカネフォーラ種(ロブスタ種)に大きく2分できる

前提として、コーヒー豆は「コーヒーノキ(コーヒーの木)」という植物になる豆である。

コーヒーノキとは、「リンドウ目アカネ科コーヒーノキ属」に属する植物の総称。
コーヒーノキの産地は北緯25~南緯25度までの熱帯と亜熱帯に集中していて、このゾーンを「コーヒーベルト」と呼ぶ。

(※ちなみに「ワインベルト」は北緯30~50度と南緯30~50度。もっとも昨今の温暖化の影響でワイン用ブドウの栽培が可能な範囲は広がっている。コーヒーノキの栽培も温暖化の影響を受けているのではないだろうか。)

コーヒーノキ属にはたくさんの種があるのだが、その中で飲料として使われるのは主に「アラビカ種」「ロブスタ種」の2種である。

アラビカ種の特徴

アラビカ種は、エチオピアが原産。
世界で栽培されるコーヒーノキの約7割が、このアラビカ種に属するものである。

とはいえアラビカ種は、コーヒーノキ全体でみると少数派の種のようだ。
「染色体数が他のコーヒーノキと異なる」「自家受粉が可能である」などの変わった特徴を持っている。

アラビカ種からは爽やかな酸味を持つ風味豊かなコーヒーができる。
そして収量も比較的高い。

しかし、栽培が難しいそうだ。標高の高い場所で栽培する必要があることに加え、霜害、乾燥、病害虫にも弱い。
わたしたちが普段飲むコーヒーの美味しさは、農園で働く方々の大変な苦労の上に成り立っている。

カネフォーラ種(ロブスタ種)の特徴

一般にはロブスタ種として広まっているが、分類学的にはカネフォーラ種と呼ぶのが正しいらしいこの種は、アラビカに比べて栽培しやすい。

「ロブスタ臭」と呼ばれる独特の香りがあり、これはあまり好まれないため、ロブスタ種はブレンド用やインスタントコーヒー用、または深煎り用に使われることが多い。
深煎りにするのは、それによってロブスタ臭がわかりづらくなるという理由もあるが、もともとロブスタ種は(アラビカ種に比べて)苦味が強い種であるという理由もあるらしい。

深煎りといえば、コーヒーの焙煎度のうちごく深煎りを表す言葉として「フレンチロースト」「イタリアンロースト」がある。
これはフランスやイタリアでごく深煎りのコーヒーが好まれてきた歴史から来ているそうだが、フランスやイタリアでなぜそのような文化が芽生えたのか?
この問いに対しては、「フランスやイタリアの植民地であった東南アジア諸国ではロブスタ種が栽培されていて、これを美味しく飲むために、苦味を活かした深煎りが好まれたのではないか」という考察がなされている。

嗜好品には歴史があり、それはたいていの場合、甘くない歴史だ。ワインを勉強したときにも同じことを思った。

「種」はさらに「栽培品種」に分類できる

カフェで出てくるコーヒーは「アラビカ種」「カネフォーラ種(ロブスタ種)」のほぼ2種類だと言ったが、それは「種」の話。

農業や園芸などで栽培される植物においては、「種」以外に「栽培品種」と呼ばれる分類もある。

「栽培品種」は、同一種のうち遺伝子上はっきりと分類できるものを指し、「バラエティー」と同義。植物学における分類階級ではなく、一般名称のようなものである。

たとえば、以下のようなものが栽培品種である。
・りんごの「ふじ」
・ワイン用ぶどう品種の「カベルネ・ソーヴィニヨン」
・米の「コシヒカリ」

そしてなんと、コーヒーの「ブルー・マウンテン」も栽培品種である!
そう、コーヒーの商品名として品種が設定されているケースもあるのだ。

それでは、コーヒーにはどんな栽培品種があるのか見てみよう。

アラビカ種に含まれる栽培品種

ティピカ種
最も古い栽培品種と考えられており、他の品種は全てティピカの突然変異や交配によって生まれている。オランダ人が最初にコーヒーを世界に広めた時に持ち出したのがこの品種であった。風味に優れた品種で世界中の多くの地域で栽培されているが、他の品種に比べると栽培量が少ない。

ブルボン
マダガスカル島の東に位置するブルボン島(現:レユニオン島)で、ティピカが突然変異して生まれた。収穫量はティピカより多い。特有の甘みが珍重される。

ムンド・ノーボ
ティピカ×ブルボンの自然交配種で、1940年代にブラジルにて発見。耐久性があり病気に強く、ブラジルによくある比較的標高が低いところ(といっても1000〜1200m)でもよく育つ。

カトゥーラ
ブルボンの突然変異種で、1937年にブラジルで発見された。コロンビアや中米で人気の品種。標高の高い産地のものほど高品質になるが、収穫量が減る。矮性種(樹高が高くならない種)または半矮性種のため手摘みに適している。

カトゥアイ
カトゥーラ×ムンド・ノーボの交配種で、1950〜1960年代にブラジルのカンピーナス農業試験場(IAC)にて開発された。カトゥーラの矮性とムンド・ノーボの高い生産性のいいとこ取りをしている。

マラゴジッペ
ブラジルで発見されたティピカの突然変異種。大粒で見栄えがよいが、生産性はあまり高くない。「エレファントビーン」とも呼ばれる。

SL28
1930年代、ケニアのスコット研究所(SL)が、乾燥に強いタンザニア原産の品種から選別した。コーヒーに果実味をもたらし、その風味はカシス(ブラックカラント)に例えられる事が多い。現在珍重されている品種。

SL34
ブルボン島からアフリカ大陸へ持ち込まれ、タンザニアからケニアへと伝わった「フレンチ・ミッション」という名のブルボンから選別された品種。SL28と同じく果実味を持つが、SL28には劣ると言われている。

ゲイシャ
ゲイシャとはエチオピア西部にある町の名前。エチオピアを起源とするこの品種は、コスタリカからパナマへと伝わった。花や香水を思わせる香り高いコーヒーを生み出すとされる。2004年にパナマのエスメラルダ農園が品評会にこの品種を出したことで急激に注目され、年々その人気を高め、近年は価格が高騰している。

パーカス
1949年にエルサルバドルで発見されたブルボンの突然変異種。名前は、パーカス家で発見されたことに由来。ブルボンに似て良質な風味を持つ。樹高が低いため、収穫しやすい。

ビジャ・サルチ
コスタリカの町サルチにて発見された。パーカスと同様、ブルボンの突然変異種で矮性である。栽培方法の工夫によって現在は非常に高い生産性が実現されている。風味も良質である。

パカマラ
パーカス×マラゴジッペの交配種で、1958年にエルサルバドルで開発された。マラゴジッペと同様に葉や果実、種子がとても大きい。チョコレート、果物、ハーブ、玉ねぎ…などを含む独特の風味が好意的な評価を受けている。

ケント
1920年代、インド生まれ。改良を行った農園主にちなんで名付けられた。サビ病への耐性が強化されているが、新種の病気には弱いことも。

S795
ケント×S288の交配種。S288ケントより先に改良されたサビ病に強い種。インド・インドネシアで広く栽培されている。

品種名+アマレロ、イエロー+品種名
コーヒーノキの果実は、完熟すると赤か黄色、もしくはオレンジ色になる。品種によっては、完熟実の色が様々である。
そこで、通常は果実が赤い種における黄色の変異種を、ポルトガル語表記では品種名の後に「アマレロ」、英語表記では品種名の前に「イエロー」を付けて区別することがある。
(例)ブルボンアマレロ(英:イエローブルボン)

ロブスタ種に属する栽培品種

全体としての生産量がアラビカより少なく、また遺伝的背景があまりにも多様であることから、ロブスタ種において個々の栽培種が区別されることは稀である。

アラビカ種とロブスタ種の交雑種

アラビカ種の風味とロブスタ種の高い生産性、耐性を掛け合わせるため、アラビカ種とロブスタ種との交配種が開発されている。

例えばバリエダ・コロンビアはその中のひとつで、他の交雑種に比べると良質だと言われ、コロンビアの主力品種の1つとなっている。

コーヒーの遺伝子は多様性に乏しい 病害虫とどう闘うか?

ここまで読んでくださった方はお気づきかと思うが、コーヒーには遺伝子的多様性が少ない。
飲用されているのはほとんどがアラビカ種であり、そのほとんどがティピカから派生したものである。

ここで思い起こされるのが、ワイン用ぶどうも「ヴィティス・ヴィニフェラ」と「ヴィティス・ラブルスカ」に2分されること、長きに渡って高級品の主流がヴィティス・ヴィニフェラであったこと、そして、そのヴィティス・ヴィニフェラを襲ったフィロキセラのことである。

ワイン用ブドウにおけるフィロキセラの悲劇

フィロキセラは体長1mmほどの虫。
ぶどうの根っこに寄生して樹を腐らせてしまう恐ろしい存在だ。

ただし、ワイン用ぶどうのうちアメリカ原産の「ヴィティス・ラブルスカ」種には、フィロキセラに対する耐性があった。そして、フィロキセラはもともとはアメリカにだけ生息している虫だった。

しかし、世界貿易の拡大とともにぶどうの苗木がアメリカからヨーロッパに運ばれることになる。
その時、苗木とともにフィロキセラもヨーロッパに渡ってしまった。

ヨーロッパ系のぶどう「ヴィティス・ヴィニフェラ」には、フィロキセラに耐性がない。フィロキセラの被害は一気に広がり、1863年にはヨーロッパのブドウ畑の2/3が壊滅してしまった。

それからヴィティス・ヴィニフェラはヴィティス・ラブルスカの台木への接木によって蘇ったのだが、
もしもコーヒーに、それもアラビカ種にフィロキセラのような脅威が訪れたらどうなってしまうのだろう?

コーヒーの病害虫対策において希望となるのはゲノム研究か

そんなふうに心配していたとき、この記事を見つけた。

ゲノム解読で「コーヒー・ルネッサンス」がやってくるhttps://wired.jp/2017/03/05/coffee-renaissance/

サントリーの研究助成を受けたカリフォルニア大学デーヴィス校の研究チームがアラビカ種のゲノム配列を解読した、という2017年のニュース。

記事によれば、この研究によってより正確に目標を定めた品種改良が可能になり、害虫への対策にもつながるのではないか、とのこと。コーヒー愛好家として、研究がいっそう進むことを期待したいと思う。

品種を知ることでコーヒー選びがもっと楽しくなりそう

最近では、コーヒーでも栽培品種名が明記された商品を見かけることがある。
まだ数は少ないが、そういうレアな商品を見つけたら積極的に購入して味を試したい。

そして、いつかは品種ごとの風味の特徴を感じられるようになりたいし、それができるようになったら、これはもう本当に夢のまた夢の話だけれど、オリジナルブレンドなんかもできたら……

今日の勉強が、そんな目標への第一歩になるといいな。

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