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2020/09/03 朝方の夢

父からの逃走
父と父の女からの逃走
(この女は、母ではないと思う。
また、この父はこの夢の中では確かに父なのだが、わたしの知っている父ではない。
まあ実際には父はわたしが物心つく前に亡くなったので、普段の様子を知るよしもないのだが
顔のつくりなどが写真で見たのとは違うと思う)

何度逃げても戻される家の、狭いシャワー室、の向こうで2人がまぐわっている
昨日おまえはわたしを犯し、おまえはそれを無視したのにな
髪を乾かしているわたしにあの女は、父に好かれるための石鹸の選び方を教えてくれる
無造作に活けられた花の色彩が憎い

父は家の外では非の打ち所のない男性である
家の中でも柔和な仮面をつけているけれど
よく見るとそれは、理解しない顔 しようとしない顔だ
父はすぐわたしたちに「依頼」をして 引き受けるまでぴたりと後ろについてくる
内容はいつも無理なことで できなければひどいめにあう
「依頼」を引き受けることは契約だからだと父は昔言っていた
家族でもそれは変わらない

神輿のパレードまで徒歩1分
黒いセダン
虎を連れて散歩する隣人
「虎を飼っているのかしらね」

友人が何度連れ出そうとしても、私は連れ戻される
なぜかどこかで車が爆発するニュースがあり その友人とは二度と会えなくなる
親戚の子もあいつの味方で みんながニヤニヤしている
(小学生の頃に近所にいた5つくらい年下の子と似ていた)

この家から出ることはできない

これ以上誰にも相談しない
誰かの人生を巻き込みたくないから
勉強して部活でたのしく楽器を吹いて、帰ったら我慢したらいい
最近では、何も知らずに談笑する友人たちをもう少しで馬鹿にしそうになるんだ
帰りの電車に乗り遅れたら殺されるから、危険を犯しても飛び乗る

ここで視点がある友人になる
(男性か女性かわからない)

家にお邪魔している
全てわかっている なにもかも全て
廊下を歩いていると予想通り男から「依頼」を受ける
引き受けないままいるとあいつはついてくる
彼女に聞いた通りだ
なんとなくキッチンに向かい、包丁を手に取ったら
女がiPhoneをいじりはじめる
外部の人間とチャットをしているみたいだ
この社会にはこうして、目に見えないネットワークが蜘蛛の巣のように張り巡らされている
(このときの女が、ママ友と連絡し合う現実の知人に重なる時もあった)
誇らしさと不安が共存する女の顔を見ると、女は男から「依頼」を受けて外部に連絡しているか、もしくは
受けていなくても自ら架空の「依頼」をつくりだし、それに応えているのだとわかる

包丁を自分の口に突っ込んで歯と歯の間に差し込み
とろりと生ぬるく鉄臭い血を吐く
吐き出し続ける
冷静なふりをしているが、汗をかいている男の目の前で
血の次に出てくるのは言葉
彼女が少しずつノートに書きつけた、暗号のようなフレーズを
僕は一行ずつ吐き出し続ける
そのリズムに乗って階段に上がると、
そこにいた彼女は僕が何をしようとしているか悟り
「もういやだ」と言いそうな泣き顔になった
環境に適応しようとするその仕草にイラついて、でも好きだから
手を取って一階に引き摺り下ろして
そのまま玄関に走り出す

吐き出す言葉は徐々に大きくなり 僕はもうほとんど叫んでいる
言葉のなかみがどんどん現実になって、僕たちは黒いセダンに乗った
家からすぐのところで神輿のパレード
それを囲む群衆も、彼女の逃走を邪魔する敵なのかもしれないと思う
でも大丈夫、今は、彼女と僕の言葉で世界が作られている
被造物が創造主を超えることはない
「虎を飼っているのかしらね」
ほんとうにこの家の近くには、虎を散歩させる女性がいるのだ
男も女も追跡してこない
彼女の携帯も鳴らない
なるほどな、いつもこうやってあとから確実に来るのか

視点はまた娘に戻る

あの子の車の後部座席で
まただ、また失う、最悪だと思う
気付いたらどこかの部屋に到着していた
数日間しか続かないとわかっている平凡で退屈な幸せのなかに、とつぜん
「発射できないはずの昔の大砲が近所の城跡から飛んだ」というニュースがとびこんでくる

ああ、世界がぐしゃぐしゃになる
父とあの女が迎えに来る

わたしはまた後部座席に乗って家に着いた
玄関先には、あの子の黒いセダンが確保されている
のに、
そこにはあの子はいない
代わりに車の中で死んでいるのはだれ?

親戚の子どもが軽々と投げ飛ばされ、地面に落ちて全身が潰れる音が聞こえたと思うと
家の中からあの子が急に現れて父を刺した

そこからのことはよく覚えていない
気付いたらあの子はどこかにいっちゃってて
でも、父もあの女もいなくて
異常な静かな家の
台所に母がいた
そう、わたしのよく知る母が
ダイニングテーブルにひとりでいた

あまりにびっくりして、
思わず玄関まで裸足で走り出てしまった
これは ちいさなときから止まらない逃走の発作だ
でも、これからはもう逃げなくていいんだと、はたと気づいて自分で母のもとに戻る
(この「逃走発作」は現実にも起こることがあった)

台所に戻ると、テーブルの上に
母の作ったワンプレートのごはんがあった
おにぎりや卵焼き、タコさんウインナー、小松菜のごまあえ、ブロッコリー、プチトマト……

母の静かな表情に、
いままでのこと全部見てたの?
悲しませてごめんなさい
と思う
でも今までどこにいたの?
という疑問が浮かび
もしかしてあの女は最初から母だったのか、わたしの目が曇っていただけで……と気づく

母とわたしとで、静かに車に乗り込む
母が作ったワンプレートごはんを持って
どこかの公園にピクニックに行くんだ

玄関にあった花鉢を抱いて
車に乗り込もうとしたそのとき
自分がとても自然に運転席に乗り込んだことに気づき、涙があふれる

ああ、わたしはやっと脱却した!
世界は大戦争のあとの焼け野原のようでもあり、
同時に、とても静かな楽園のようであった!
(ここで目覚めた。現実にも泣いていた。全身がびっくりするほど心地よく脱力していた)

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京都在住。創造的なことすべてに興味があります。

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