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熟成肉×パスタの会@プレーゴ藤吉

昨晩、プレーゴ藤吉さんにて行われた「熟成肉×パスタの会」のレポ。

プレーゴ藤吉は、京都は木屋町二条、鴨川のほとりにあるイタリアンレストランで、サカエヤの新保社長が手当てしたお肉の炭火焼が楽しめるお店。オーナーシェフのオカさんとは、これまでワイン会などで何度もご一緒させていただいているが、優しくそして信念を持っておられる素敵な方だ。

目次

隠れテーマは「イノベーション」

会の初めに、今回のディナーの立役者さんたちから一言ずつ解説があった。

まずは今回の主催者であるオカさん(左)から、今回の隠れテーマが「イノベーション」であることが明かされる。「イタリアンというジャンルを超えるような料理」が提供されるとのことで、ますます期待が膨らむ。

そしてパスタ担当、岡山にある「冨士麺ず工房」のハタさん(中)。冨士麺ず工房は、実はもともと中華麺が専門の製麺所なのだというお話。その技術を生かした生パスタが、今日は「前菜からデザートまですべてのお料理において」登場する。確かにイノベーション感がある。

そしてワインのセレクトは、世界の自然派ワインを取り扱う伏見の会社「ディオニー」のトオヤさん(右)。今夜の挑戦的なコース構成に、どんなペアリングがなされるのだろう。わくわくする。

お肉、パスタ、ワイン

では、実際に頂いたお料理とお酒を紹介しよう。

ぎょうざの皮×愛農ポーク×コンソメ
ラ・シードルリー・デュ・ゴルフプティ・キュヴェ

驚いた。だっていきなり餃子だし、いきなりシードルなんだもの。
でもこれが相性抜群なのだ。

まず、このシードル。
シードルがこんなおいしいものだとは思わなかった。

無農薬リンゴが使われていて、醸造の際にも余計なものが入れられていないそうだ。シードルをこうやってナチュラルに作るのはとてつもなく難しいらしい。
これまで飲んだシードルとは全然違う。くだもののエネルギーが凝縮されているのを感じる。シードルとは喉越しを楽しむお酒ではなく、優しい甘味とわずかな苦味・酸味を、少しずつ味わうお酒だったのか。

そして餃子。皮がめちゃくちゃ薄い。なんというか、はかない感じ。わたしの知っている餃子ではない。
中には愛農ナチュラルポークに加えて、紫キャベツのザワークラウトとトリュフ。コンソメは午前3時まで煮込まれていたものらしい(笑)技術と手間がかかった優しい味わいが、ゆっくりと身体に染み渡ってゆく。

このペアリングでは特に、シードルの中にわずかに感じる麦のような苦旨味と、餃子の中のキャベツから出る酸味が絶妙にマッチしていた。

リナーシタ白×ほうき鶏
ルドヴィック・シャンソン レ カヴォティヌ

パスタの名前である「リナーシタ」とはイタリア語で「復活」の意。
なぜそんな名前が付いているかというと、滋賀の地で蘇った「ディンケル小麦」(古代小麦)を使っているから。すごい小麦農家さんが滋賀におられるらしい。

古代小麦は、安定して作るのが難しいという(だから品種改良されていったのだ)。だけど古代小麦にしか出せない味や食感がある。
ハタさん曰くこのリナーシタ白、「小麦を最大限に活かすことを考えたらこうなった。パスタを作ろうと思って作ったのではない」そうだ。

見た目は半透明で、中に褐色のつぶつぶが見える。食べてみると驚くほどもちもちでツルツル、どことなくフォーを思い出す味わい。少し和風の味付けにとてもマッチしている。

ほうき鶏は上に乗っている分だけでなく、そぼろ状になったものが隠されている。お肉単体の味も、パスタと絡んだ時の味も両方楽しめて嬉しかった。

そこに合わせられたのはロワールのシュナン・ブラン。この品種にしては優しい味わいで、そこに塩味がしっかりきいている。お料理に使われているネギの中心部の甘みに沿わせてセレクトされたそうだ。なるほどなあ……

タリオリーニ×近江牛
ドメーヌ・カルテロル エスタ フェット ブラン

出ました!「素パスタ」!
まずは麺だけを楽しみ、その後に別皿の具を混ぜていただく。

このタリオリーニ、すごく黄色く見えるのは写真のせいではなく、実際にめちゃくちゃ黄色い麺なのだ。それは、通常よりもたくさん卵黄が入っているから。

麺の中の卵黄比率を増やすと「シャクシャク感」が増すそうだ。確かに! ゆで卵の黄身の旨味部分を思い出す。

じゅうぶんパスタを楽しんだら、具材をオン。近江牛(タルタルとハンバーグの間みたいな感じ)、うずらの卵黄、そしてすぐき!
これら具材の旨味が麺の旨味と重なると、もうやばかったです。脳天に突き抜けるタイプの味。

ワインはルーションのグルナッシュ・ブラン。造り手は、ワイン造り一代目の気さくなお兄さんらしい。その人柄を表すかのように伸び伸びとした味わい。木の実のような香ばしさが心地よい。

このワインで特筆すべきは、すぐきとの相性が良かったこと! 苦味と酸味のバランスが絶妙にマッチしていたのだろうか。お互いに全く邪魔することなく、足りないところを埋め合う感じだった。

かん水入パスタ×オマール海老
カステル・タージュ カヴァ アンヌマリー ブリュット ロゼ

海老を焼く香ばしい匂いがお部屋に充満する中、すごく綺麗な泡のロゼカヴァがサーヴされた。香りを取ってみんなが思わず笑ってしまう。だってこのワイン、あまりにも海老の香り! ペアリングへの期待がぐんと高まる。

時間を置くと、いちごのような果実感が顔を出す。しかもハウス栽培の完璧ないちごではなく、家で露地栽培したいちごのニュアンス。実家を思い出してひとり懐かしい気持ちになってしまった。

このワインはご夫婦で造られていて、当主は奥様。三代続けて女性が当主のワイナリーなんだって。

待望のお料理が運ばれてきて、かん水について説明がある。中華麺の材料であるかん水は、それ単体だと無味無臭だが、麺と卵のタンパク質に反応すると独特の風味、食感、黄色みを出す。その風味が甲殻類に似ていることから、今回オマール海老と組み合わせることになったそうだ。そしてその組み合わせが、本当に美味しかった。

これまで経験した甲殻類系のパスタって、ソースが具材にはしっかり絡んでいても、麺だけなんだか疎外されていると感じることが多かった。でもこの一皿は違った。全部がちゃんと馴染んでいて、味がすっからかんな部分が見つからない。本当にすごい。

岡部さんの野菜と山野草のサラダ

ここでサラダ。でも箸休めという感じではない。

滋賀県の岡部さんが作った野菜の甘味に山野草の力強い風味、そしてみかんドレッシングの爽やかなアクセント。どの一口もおいしい。サラダってこんなにおいしくて存在感があるのかと思う。

プレーゴではいつもこのお野菜が食べられるんだよね。最高だなあ。

お皿は信楽焼で、美しい青色は琵琶湖をイメージされているらしい。

リナーシタ黒×40日DAB(ドライエイジングビーフ)
チョチアシュヴィリ ルカツィテリ
ドメーヌ・カルテロル エスタ フェット ルージュ

再びリナーシタ、今度は「黒」である。
「白」よりもディンケル小麦の量が多いそうだ。小麦が増えると「ねちっ」とするらしくて、それを抑えるために卵白を増やしてあるらしい。

この一皿のコンセプトは「熟成肉と麺を合わせるのなら、お肉だけでなく麺からもナッツ香を表現する」というもの。それがちゃんと実現されていた。お皿の上で対等な関係を築き、お互いを引き立て合うパスタと熟成肉。我々人間にとっての理想の世界がここにある(?)

ドリンクは、ジョージアのオレンジワインとルーションの赤ワインの二種類が用意された。
このオレンジワイン、美味しかったから覚えておきたい。赤ワインの方も面白くて、グルナッシュ・ノワールが主体なのだけれど、グルナッシュ・グリとグルナッシュ・ブランも入っているからか少し白ワイン的な優しさがある。「ストレスフリー」という表現に、なるほどなあと思った。

パッパルデッレ×ブラウンスイス

幅広パスタに少し苦手意識があった。ものすごくボリューミーで、噛んでいるうちに小麦の味しか感じなくなってしまうというイメージがあったのだ。

でもこれは違う。絶妙だった。ソースと具材を邪魔しない幅広麺は、こんなに尊いのか。

ラグーのお肉は、オカさんとハタさんの出会いの場である吉田牧場で育ったブラウンスイス牛。乳牛で、お肉にもミルキーな風味がある。上にかかったチーズもブラウンスイスのお乳から作られているそうだ。

このお料理からは、優しくてまあるいハーモニーを感じることができた。
デザート前の最後の一皿がこれで、大満足。

カンノーリ×アマゾンカカオ
コーヒー 又は 紅茶

デザートは「葉巻スタイル」!
アマゾンのカカオを使ったクランチとカカオニブの包み揚げに、いちごソースが添えられている。美味しくて楽しいスイーツだ。

カカオは農家さんから直接、適正価格で買っているらしい。カカオとかコーヒーとかって、そういうところをちゃんと考えないといけないよね。誠実な商取引によってこの美味しさが成り立っていると知って、食べている側としても嬉しくなった。素敵な姿勢だ。

プロのエネルギーをいただいて

コースが終了した後、シェフやサービススタッフからもお話があった。

サトウシェフ(左)は「とにかく大変でした、へろへろです」と。 全てのお料理にパスタがあるなんて、それはそれは大変なことだと思う。いくら考えても、あの場にいた全員に、常に最高の状態でパスタを提供してくださったシェフは本当にすごい。

サービスをしてくださったスタッフのほとんどが大学生だと知り、驚く。最初から最後まで気持ちよく、何の心配もなく目の前のお料理・ワインを楽しめたのは、サービスの方々のおかげだ。サービスチーフのカワイさん(右)にも感謝の気持ちでいっぱい。

最後にオカさんが「すごくエネルギーを使いました」とおっしゃったとき、全力で肯いた。何かを食べておいしいと思うとき、私たちは、その一口に関わった全ての人のエネルギーをいただいている。その有り難みを改めて実感することのできる素晴らしいディナーだった。

もちろん持ち帰りました!

お開きとなったあと、嬉しい販売コーナー開設!
家で扱いやすいキタッラの生麺を用意してくださっていた。2袋購入。
何味にしようかなあ。考えるだけでわくわくします。

関連リンク

プレーゴ藤吉さん http://www.prego-style.net/tokichi
冨士麺ず工房さん https://fujimenzukoubou.jp
ディオニーさん http://www.diony.com

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京都在住。創造的なことすべてに興味があります。

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