松井酒造×酒ストリート オンライン蔵元会

先週の土曜日、京都の酒蔵・松井酒造と日本酒スタートアップの酒ストリートがコラボ開催した「オンライン蔵元会」に参加した。

備忘録として、テイスティングの感想、学んだこと、参加してよかったことなどをまとめておこうと思う。

イベントの概要

  • 主催:酒ストリート株式会社、松井酒造株式会社
  • 日時:5月16日(土) 19:00~21:00
  • 参加方法:オンラインショップで対象商品を購入後、メールにて送付される招待URLからZoom会議に参加
  • 参加人数:先着50名
  • イベント内容:松井酒造が醸す「神蔵(かぐら)」「富士千歳(ふじちとせ)」計6種を楽しみながら、蔵元である松井治右衛門氏のお話を聞く。オンライン蔵見学や質疑応答の時間も設けられる。

松井酒造について


松井酒造は、1726年(享保11年)創業の歴史ある蔵元。太平洋戦争後、工事の影響で地下水の水脈が変わったことを受けて蔵を城陽に移転させていたが、2009年に「鴨川蔵」を設置し、川端東一条の地に復活した(出町柳から5分くらいの場所)。現在は、地下50mほどの水脈を使っているそうだ。

「神蔵 KAGURA」「京千歳」「金瓢」 などのラインナップを取り揃えている。わたしにとっては、吉田神社の屋台で提供される「富士千歳」の味がもっとも身近だ。

■ 松井酒造株式会社 公式ホームページ

今回いただいた松井酒造のお酒たち🍶

今回のオンライン蔵元会にあたって、150mlびん×6種類の日本酒が事前に届けられた。

こんな箱で!

この箱のデザインが本当に素敵で……「どこのデザイナーさんが考えたんだろう」って思っていたら、なんと松井酒造が自社でデザインされたとか! 驚愕。なんてクリエイティブなんだろう。

本のようなデザイン、これは決して形だけではない。箱を開けると、その内側にちゃんと物語が綴られているのだ! その内容もとてもよかった。「物語を読むようにお酒を味わってほしい」との願いから、このようなデザインに至ったらしい。素晴らしい……

以下、テイスティングノート。松井さんの指示のもとで飲み進めた順番どおりに記載していく。

純米大吟醸  五紋神蔵 KAGURA 無濾過生原酒 限定 祝 35 白

  • 米:祝
  • 精米歩合:35%
  • アルコール分:16度
  • 純米大吟醸
  • 生酒

おちょこに少し顔を近づけるだけで漂う、圧倒的に華やかでフルーティーな香り。このアロマに没入したくて、思わず目を閉じてしまう。好きな香り!

透明な輝きを口に含んだ瞬間、脳裏に浮かんだのは、初めて食べた夕張メロンの味。豊かなコクを伴うジューシーな甘さと、メロン独特のほのかな塩辛さ+苦さ。ボディは豊かなのに、纏う空気は爽やかなんだよね。水平方向に、じんわりと丸く広がってゆく。高貴なお酒だなあ。

ふじちとせ しぼりたて

  • 米:五百万石
  • 精米歩合:70%
  • アルコール分:19度
  • 本醸造

いわゆる日本酒、という感じの美味しさ。濃い、ではなく、濃ゆい、って言いたくなるようなお酒だ。

神蔵がモダンな日本酒だとすれば、富士千歳はクラシックタイプなんだそう。とてもわかる。力強い料理とか素朴な家庭料理とも合わせやすい味だなあと思った。

純米吟醸  五紋神蔵 KAGURA 無濾過生原酒 限定 雄町

  • 米:雄町
  • 精米歩合:60%
  • アルコール分:17度
  • 純米吟醸
  • 生酒

祝の純米大吟醸に少し似ているが、こちらのほうがしっかりとした骨格を感じる。また、祝の純米大吟醸はフルーツ100%! という感じだったのに対して、こちら雄町の純米吟醸は、なんていうのかなあ、「おかずの旨み」みたいなのがある感じ。それを、祝とは違う種類の、上方にすーっと抜けてゆくような爽やかな酸味が支えている。

カルパッチョに乗ってたケッパーとあまりに相性が良くてびっくりした。

ふじちとせ 純米にごり酒

  • 米:五百万石
  • 精米歩合:70%
  • アルコール分:14度
  • 純米

これはもう、おなじみの味! 吉田神社の節分祭に出ている屋台は、ふじちとせのしぼりたて or にごり酒の二択。わたしはほとんどの場合にごり酒を選んでいたように思う。懐かしすぎて、5月なのに身体が2月モードになってしまった。

いや、でもこれ本当に美味しい。ヨーグルトを思わせる味わいですね。酸味がきれいで、すごく好き。「このお酒、こんなに美味しかったんだなあ」としみじみ思った。もちろん節分祭でも美味しいと思っていたけれど、毎年節分祭に行けていた頃はお酒のことなんてまったく勉強してなかったし、酔えたら何でもいいやって思ってたもんな……美味しいものがどんなふうに美味しいのか、少しずつわかるようになってきている。嬉しいな。

松井さんが「海外では、このにごり酒にライムを絞って飲む方がいらっしゃる」と教えてくださった。家にライムがあったのでさっそく実践してみたら、これがめちゃくちゃ合う。別の飲み物になる感じ!

あ〜、次の節分祭は絶対行ってにごり酒飲もう。樽から汲んでもらった、木の香りがしっかりついたのを飲みたい。早く京都に引っ越し直さないと……

神蔵 KAGURA 純米無濾過原酒

  • 米:祝
  • 精米歩合:65%
  • アルコール分:17度
  • 純米
  • 生酒

同じ祝を用いた純米大吟醸にもちろん似ているが、こちらはより力強い。そして、どちらかというと、祝の純米大吟醸よりも雄町の純米吟醸に近いと思った。この系統は全部好きだなあ。自分の好みがどんどん明確になる。

鮎+蓼酢とか、鱧+梅肉とかに合わせるのがおすすめらしい。その響きだけでお腹空いてくるなあ。どちらもこれから旬ですね。

純米大吟醸  五紋神蔵 KAGURA 無濾過生原酒 限定 山田錦 35 黒

  • 米:山田錦
  • 精米歩合:35%
  • アルコール分:17度
  • 純米大吟醸
  • 生酒

こちらも、香りや味わいが上方に広がってゆくのだけれど、雄町の「すーっ」て感じではなくて、放射状に、半円を描くように広がる気がした。要するにとてもパワフル、エネルギッシュな印象。

もちろんこれも美味しいのだが、同じシリーズで比べるなら、わたしは「白」のほうが好みだったかな。もともと丸い感じの味が好きなので、「やっぱりな〜」って感じです。美味しいものと美味しいものを比べるのって本当に贅沢で、楽しい。

今回の蔵元会で学んだこと(の、ほんの一部)

今回の蔵元会は2時間。そのあいだに、膨大なことを学ばせていただいた。こんなに濃密な時間を過ごすのは、いつぶりだろう……

学んだことをすべては書ききれないので、一部だけをここに書き残しておく。

松井さんのこと

「どんな人がこれを造っているのか」を知ることができたのは、本当に大きな収穫。ワインでも同じだけど、生産者を知ることがさらなる美味しさにつながってゆく。最近はよく、作者と作品は別物だというフレーズを聞くけれど……そんなに割り切れるものではないとわたしは思う。

松井酒造を継ぐことになった経緯とか、酒造りに関する考え方とかを聞いて、松井さんは本当に知性とクリエイティビティにあふれる人なんだなあと感じた。内容からそう思った、というのももちろんあるけれど、喋り方とか表情とか、そういうところから感じ取れることが多かったのだ。オンラインでも、けっこうたくさんの情報が伝わるのだなあ。

酒ストリートのメディアに松井さんへの素敵なインタビュー記事があったので、掲載しておく↓

洛中最古の歴史、最新の設備・グローバルなチームでの酒造り – 京都・松井酒造(神蔵) | SAKE Street | 日本酒をもっと楽しく
京都市左京区、出町柳駅から徒歩5分あまり。近隣には下鴨神社や吉田神社、京都御所などの有名な観光地も位置する市街地です。京都大学からほど近く、学生や外国人観光客も多いこの土地のマンションの1階に、創業300年近く(1726年創業)、洛中でも最古の歴史を誇る酒蔵・松井酒造があります。実は、松井酒造がこの地で造りを再開したの…

祝米の特徴

祝は、主に京都で造られている酒造好適米。たとえば最初に飲んだ純米大吟醸は、美山産の祝で造られているそう。松井酒造では、ほかに静原産の祝も用いているらしい。

今回、このお米の特徴を、松井さんから聞くことができた。

祝はほかの米に比べて柔らかく、酒の中に溶けやすい。そのため、濃醇な酒が造れる。甘さが際立ちやすく、酸味や苦味も出てきやすい。(ちなみに、これと逆なのが五百万石。溶けにくく、淡麗辛口になりやすい)

柔らかくて溶けやすいぶん、ほかの米とは違う操作が必要で、扱いが難しいそうだ。たとえば、うまく水を打つ必要がある。その際にかきまぜすぎず、濃いところと薄いところを作り、薄いところで発酵を促すのがコツらしい。そのような苦労の末に、あの美味しさが……ありがたいなあ。

アルコール添加についての松井さんの考え方

何かと悪者にされがちな「アル添」。松井酒造では、9割のお酒が純米酒で、アルコールを添加したお酒は残り1割。純米酒のほうが売れる時代が到来しているにも関わらず、「すべてを純米酒にする」という選択肢はとっていない。それはなぜか?

松井さんは、「アル添にはアル添の技術がある」ということを強調しておられた。純米酒しか造らなくなってしまうと、アルコール添加の技術自体が消えてしまう、それを防ぎたい、技術を継承したいのだとおっしゃっていた。

こうした造り手目線の意見はわたしにとってかなり新鮮だった。これまで、アルコール添加の意義を問われても「それでしか得られない風味があるよね」という答えしか持っていなかったから……今回新しい視点を得たことで、お酒の楽しみ方がひとつ増えた。

オンライン蔵元会に参加してよかったこと

最後に、このオンラインイベントに参加してよかったことをいくつか。もちろんこれ以上にたくさんあるのだけれど……とても書ききれないので、3つだけに絞る。

臨場感あふれる見学が楽しめた

今回は、蔵元見学もオンラインでおこなうことができた。松井さんがカメラを持って蔵に入ってくださったため、常に松井さんの視点で見学することができたのだ! これは、オフラインではできない体験ではないだろうか。

発酵中のタンクの中が覗けた

松井さんがカメラを持ってタンクにのぼり、発酵中のお酒の様子を見せてくださった。慣れた手付きで衛生キャップをかぶり、アルコール消毒をされる姿から、いつも衛生に気を遣ってらっしゃることが窺える。

タンクの中は、予想以上にもこもこしていた! 改めて、「日本酒って発酵してるんだなあ」と思った。

「香りを嗅ぎたい」「オンラインで香りを伝える技術が待たれる」みたいなコメントが続出していた。過去の見学会(オフライン)でも、タンクの中を特別に見せていただけたようだ。もし機会があれば、今度は実物を見に行って、香りを楽しみたいなあ。

松井酒造のタンクはステンレス製。よく使われるホーローは鉄さびが出やすい(※鉄は日本酒造りにおいてできる限り避けたい物質)ので、ステンレスを選んだということ。ステンレスタンクは高額なんだって。

それから、タンクが細型だった。ほかの参加者の方が「京都の樽は細いものが多いらしい」みたいなことをおっしゃっていた。どうしてなんだろう? 真相を知っておられる方、教えて下さい。

麹室の見学ができた

普段は見ることのできない麹室の内部も見学できた。松井さんがカメラを持ち、内部に入ってくださった。臨場感がある。

今年は麹造りが完了していて、これから大掃除をおこなうというタイミングらしい。麹室の大掃除が一番たいへんな作業だとおっしゃっていた。たしかに、麹造りの邪魔をする菌が住み着いてしまったら大変だもんなあ。

松井酒造の麹室は、ステンレスの壁! 多くの酒蔵では杉などの木材を壁に用いて吸湿させているが、手入れのことを考えてステンレスにしたそうだ。湿度の管理は除湿機などでおこなっているらしい。

見学全体を通して、伝統を守りつつ、必要なところはしっかりと機械化や合理化を進めることで、品質向上に努めているという印象を受けた。こういう姿勢、共感できるなあ。

質問がしやすかった

今回の蔵元会では、Zoomのチャットや挙手機能を用いて質問ができた。わたしも一度質問をしたのだが、すごく質問がしやすくてびっくりしてしまった! もしオフラインだったら、恥ずかしくて質問できなかったかもしれない。物理的に手を挙げなくてもいいっていうのは、こんなにも心理的に楽なのか……

もちろんシステムだけの問題ではない。司会をしてくださった酒ストリート藤田さんの手腕もあって、質問しやすい空気感がつくられていたのだ。

一体感があった

会が始まる前には、オフラインってその場の空気があまり共有できなさそうだよなあ、と思っていたのだが、それは杞憂に過ぎなかった。50人ほどが参加されていて、わたしにとってはほとんど初対面の方ばかりだったのに、序盤から安心感があり、終盤はものすごい一体感に包まれていた。

「人間、オフラインでもこんなに盛り上がれるんだ」と思って驚いた。これも、司会の藤田さんや、素晴らしいトークを繰り広げてくださった松井さんのわざなのだろう。この会のために、幾度となくリハーサルを重ねたとおっしゃっていた。ありがたいことだなあ。

Enthusiasm is contagious.

「熱意は伝染する。ウイルスよりも強く――」

会の最後に松井さんがおっしゃった言葉。今回の蔵元会で、まさにそのことを実感することできたように思う。

「大変な思いをしながらも、情熱を持ち続けて、この美味しさを造ってくれる人がいるんだ……尊い……」と、生産者さんの言葉に触れるたびに思う。すると、目の前の世界が少し輝きはじめる。その後、その方々が造ったものを口にするたびに、世界に、そそして自分自身に、きらめきが増えてゆく気がする。不思議だけれど、いつもそうなのだ。

コロナ禍によって生産者さんとのコミュニケーションも難しくなっているときに、今回のような素晴らしい企画を用意してくださった松井酒造さんと、酒ストリートさんに感謝します。ありがとうございます。

現在わたしは、酒ストリートさんのメディアでライターとしてお世話になっている。このオンライン蔵元会に参加して、こんなに素敵な組織とご縁があったことを、改めて嬉しく思った。これからもたくさん勉強して、美味しいお酒をたくさん飲んで、貢献していきたいと思う。

Comments

タイトルとURLをコピーしました