宇佐美りん『かか』

なんで「自傷読書」か。それは、この小説のさわりをちょっと立ち読みした瞬間に、「これはわたしのよく知っている体験について書いてある小説だ」ということと「わたしの急所を的確に突いてくる、わたしにとってかなり痛くてつらい読後感をもたらす小説だ」ということが明確にわかり、それをわかった上で買って読み、やはり痛い経験をして、しかしその痛みにどこか救われている、そういう読書だったからです。

本当はこの記事で、この小説のどんなところに共感したか、自分のどんな経験が響きあったか、どの文章がわたしを一番突き刺したかっていうことを書こうとしていたけれど、それはやっぱりやめました。だってこの小説は、具体的に同じような経験をしていない人のことも突き刺すことができるすごい小説だと感じたから。

一箇所だけ、わたしが圧倒された部分を引用しておきます。

おそらく誰にもあるでしょう、つけられた傷を何度も自分でなぞることでより深く傷つけてしまい、自分ではもうどうにものがれ難い溝をつくってしまうということが、そいしてその溝に針を落としてひきずりだされる一つの音楽を繰り返し聴いては自分のために泣いているということが。

ぜひ読んでください。同じ痛みをどうか味わってください。