「文喫」に行ってみて

「文喫」に行ってきた。

文喫 BUNKITSU | 本と出会うための本屋。
文化を喫する、入場料のある本屋。人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約三万冊の書籍を販売します。一人で本と向き合うための閲覧室や複数人で利用可能な研究室、小腹を満たすことができる喫茶室を併設しています。エントランスでは約九十種類の雑誌を販売。店頭ではあまり出会うことのできないラインアップも交え、来店されたお...

入場料を支払って入る本屋さん。珈琲と煎茶が飲み放題で、軽食メニューもある。Wi-Fiと電源も、もちろんある。

セレクト書店というのは当たり外れが激しいので、あまり期待してはいなかった。

しかし入ってみるとどうだろう。事前情報から予想していた以上に素敵な品揃えではないか。まず、存在する本の数が思ったより多い。本のジャンルもかなり幅広く、人文科学系の本が想像以上に豊富に揃っている。大学で研究していたときに出会いたかった、と思うような本もかなりたくさんあった。

そして、通常の書店で出くわしてしまうような「目に毒な本」がない。いわゆるヘイト本とか健康本とかの類が存在しないだけで、書棚全体から受ける印象がこんなにも違うのかと驚く。まず、色合いが違う。こういう美しい書棚を、自分が久しく見ていないということに気が付き、ひどく落ち込む。たとえ、家の近くの図書館であっても、ぜったいに得られない落ち着いた風景。くやしすぎる。

わたしはもともと図書館という場が大好きなのだけれど、今住んでいる場所にある図書館は全然好きになれない。そこにいる人のほとんどが、雑誌または新聞を読んでいるばかりで、ふつうの「本」を読んでいないからだ。人々が近くで本を読んでいる、あのゆるやかにあたたかい空間に身を置けたのは、大学院の研究室が最後だった。

だから今日の文喫での時間は、久しぶりに味わう楽園的な幸福だった。

正直に言って、隣で誰かが本を読んでいてくれるというだけで、自分がこんなにも安心することができるとは思わなかった。逆に言うと、近くに本を読んでくれる人がいない環境で自分がどれほど不安になっていたのかがわかった。そういえば、電車で本を読んでいる人がいるときには、少しだけ安心していることを思い出す。なぜだろうか。

気になることは、やはりこのような場は、東京でなければなりたたないのか? ということだ。京都の「私設図書館」とはまた違って……なんていうんだろう。とにかくわたしはくやしかった。ここで過ごす時間にこんなにも満足しておきながら、同時によくわからない怒りさえ覚えていた。こういう場所がもっとたくさんなければいけないのに。ほんとうは。

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